昔は二世帯住宅が一般的な日本の住まい方でしたが、子供世代の意識の変化や社会環境により核家族化が進み、これが各世代で家を建てる住まい方となっていったと思います。

最近、昔のような二世帯住宅で暮らすという変化が出てきているようです。
その理由や主なメリットとして考えられるのは3項目ぐらいあるようです。

 1.親世帯の老後のことを心配して、親が近くにいると安心感がある。
 2.子供を親に預けて働くことができる。共働きがしやすい。
 3.家を建てるには土地の購入など経済的な負担が大きい。光熱費や税金面の節約ができる。
これらは二世帯住宅を考える最も大きな動機と考えられます。

このようなメリットがありますが、一方では親子とはいえ複数の世帯が同じ家に暮らすことによる気兼ねや過干渉といったことから、せっかくの住宅建築がうまくいかなかったことも多いようです。
そこで、これまでの経験から二世帯住宅の計画にあたっての注意点、アドバイスを以下にまとめてみました。

二世帯住宅

二世帯住宅は、当然ですが異なる世帯がひとつの住まいに一緒に暮らすものです。
一戸建て住宅の場合は、通常は夫婦間で話し合い意見の調整を行います。場合によっては設計者が加わりアドバイスしたり意見の調整を行います。
これが二世帯住宅の場合は2つの世帯同士となり、家づくりに参加する方の人数は増え、親族とはいえども世代の違いから生活スタイルも考えも違う方が加わることになり、その結果、方向性を定めるのは非常に難しくなってきます。
同居される家族の皆さんが同じ考えなら問題はありませんが、家族の中の主導権を持っている人と意見が違い口をはさめないような場合、または意見を言えない控えめな方がいたり、そもそも話し合い自体がスムーズにできないままに住宅計画が進んでいった場合は、住宅が完成した後になってから問題が大きく噴出してしまうことになります。

そこで私がお勧めするのは交渉役を皆さんで決めていただくということです。その方が、家族の皆さんの意見や希望をまとめて設計者に伝えて計画を練っていくのです。
当然交渉役の方は、ワンマンに自分の意見を押し付けてはいけません。あくまでも皆さんの考えをまとめて方向性を設計者と決めていくのです。
具体的には、家族間の暮らし方、どのように分かれて暮らすのか、どこは一緒に利用するのか、などの生活スタイルを考えてください。これらをふまえながら家づくりの基本的な方向性を決めることが二世帯住宅計画にあたっての第1ステップです。この第1ステップを考えないで、いきなり具体的な間取りや家の計画を進めることは失敗のもとです。

二世帯住宅

つまり、お互いの世帯の行き来をどうするか、各世帯間でどの程度の関係性を持って住むのか、親子の間といっても親しき仲にも礼儀ありですから、一緒に住む経済性だけで考えるのは計画開始段階において最も注意すべきことと考えます。

そこで、下記の表にどのような住まい方のパターンが考えられるのかまとめてみました。
建築的な配慮だけでは解決のできない場合がありますので、住まいが生活上のストレスになってしまうようなことにならないように考えなければいけません。

同居のパターンを7タイプに分けて考えてみます。
大きくは「玄関を別々に設けてそれぞれ独立した生活をする場合」(完全分離型)と
「玄関が1つの場合」(非完全分離型)に分かれます。

完全分離型

① 縦割タイプ  同居住宅の理想型だが敷地にゆとりが必要
メリットデメリット                 
生活騒音の影響が少ない       
プライバシーが保てる             
一戸建てに近い
階段が2カ所必要
② 横割タイプ  上に住むか下に住むかは一長一短、割り切りが必要
メリットデメリット                  
プライバシーが保てる            
土地の利用効率がいい
上階の世帯には上下移動がついてまわる
下階の世帯には上階の生活騒音が気になる
地上階世帯は日照条件が良くない
③ 縦割横割混合タイプ  必要に応じて面積配分が調整できる
メリットデメリット                  
プライバシーが保てる
二世帯の面積調整が容易           
土地の利用効率がいい
上階の生活騒音の影響を受ける

非完全分離型

④ 玄関のみ共有タイプ  プライバシーが確保しやすい準完全分離型
メリットデメリット
比較的プライバシーを保ちやすい       
土地の利用効率が高い
各世帯の行き来が便利
留守番を頼みやすい
各世帯の生活騒音が聞こえやすい
完全分離型に比べればプライバシーが侵されやすい
玄関の使い方が悪いと他の世帯に不快感を与える
⑤ 玄関・リビング共有タイプ  リビングを二世帯でうまく活用する必要がある
メリットデメリット                  
床面積を有効に利用できる
プライバシーもある程度は保てる       
広めのリビングをつくれる
二世帯の動線が少々交錯する
リビングの使い方に制約が生じる
世代間のライフスタイルの調整が必要になる
⑥ 玄関・キッチン共有タイプ  コミュニケーションの場が確保できる
メリットデメリット                  
キッチンに掛かる費用が節約できる
二世帯のコミュニケーションの場がある    
大家族的良さの可能性がある
プライバシーが保ちにくい
キッチンの管理が難しい
⑦ 完全同居タイプ  大家族的楽しさがある
メリットデメリット                  
大家族的楽しさがある
お年寄りの世帯と同居すると目がよく届いて便利
プライバシーの確保が難しい